脚本 両澤千晶、演出 鳥羽聡、絵コンテ 福田己津央
ストーリー
C.E.71.6.15。オーブ連合首長国での戦いの最中、一民間人であったシン・アスカは、その戦いの中で両親と妹を失った。
C.E.72、ヤキン・ドゥーエ宙域戦を最後に、ナチュラルとコーディネーターの戦いを幕を下ろし、ユニウス・セブンにおいて締結された条約によって世界は安定を取り戻そうとしていた。
C.E.73.10.2。新造戦艦ミネルバの就役記念式典の準備が進められているL4・プラント、アーモリー・ワンに、オーブ連合首長国の国家元首となったカガリ・ユラ・アスハがアスラン・ザラとともに降り立った。デュランダル議長との極秘会談を行う為である。
同じ頃、スティング達3人が、軍の内通者に手引きされ、極秘に開発されていたガンダムタイプ3機を強奪する。
会談の最中、その戦いに巻き込まれたカガリとアスランは、ザクウォーリアに乗り込むが、逆に危機を招いてしまう。
そこに降り立った新たなガンダム、それは2年前のオーブ攻略戦にて家族を失った、シン・アスカが搭乗するインパルス・ガンダムであった。
アバンタイトル
まずはアバンタイトルから。本作から2年前、前作SEEDのオーブ攻略戦から。主人公シン・アスカとその両親、妹が戦禍から逃れる為に避難する。
上空ではフリーダムとカラミティ、レイダー、フォビドンによる空中戦。それに巻き込まれてシンを除いて家族は全員死亡。シンが後に軍へと入る動機付けとなる場面だ。
両親、妹のキャラはどう見ても「その他大勢」的な無個性の顔。特に妹の顔はちゃんとデザインしてもっと全面に出てきても良かったと思う。今後、シンが戦う動機を問われた時、このアバンのシーンが重要になるはずなのに、少し顔が出なさ過ぎだ。シンとも少しイメージが違い過ぎる。もっとも、「実はシンの両親は別にいる」というのを暗示しているのなら、その伏線かも知れない。
カットは前作からの使い回しが多いが、アーク・エンジェル等のCGは書き起こしか? 繋ぎ方はかなり自然な感じになっている。
この時点で、シンは家族を巻き添えにしたのが、フリーダム(キラ)か、他の三機のガンダムか判らない。つまり、後の話でシンとキラが対決することもあり得る訳だ(第1期オープニング参照)。
妹のマユが落とした携帯電話を拾いにいくシンだが、その御陰で一人だけ生き残る。SEEDの世界でもケータイって存在するんだな。もっとも、シンをここで生き残らせる為の小道具以外の意味はなさそうなので、今後、このケータイを眺めるシーンは多くあるだろうが、他のシーンで携帯電話を使うことはないだろうと予測。典型的な「理由付けの為にそこにだけあるアイテム」だと思う。実際には様々な場面でケータイを使用してくれれば、「SEED世界で誰もが使っているアイテムだが、シンにとってのそれは特別な意味を持つ」ということになるんだが。
マユ、両親の死に様は結構残酷かも。マユは腕がもげているし、母親は手足や体が変に曲がっているし、父親も頭が潰されているような感じ。かなりハッキリと描いている。
やはりこのシーンまででは家族の描写が少な過ぎて、シンとの繋がりの強さが見えてこない。ただ死んだだけという感じで、この時点で家族を失ったシンの悲しみと怒りに感情移入はなかなか出来ない。
この前に再放送されているSEEDはちょうどオーブ戦の最終段階。このあたり、上手い繋がりとなっている。
CM等で流れる映像で、カラミティとレイダーが映っているのを見て「???」と思ったが、なるほど、そういう導入部だったんだな。
Aパート
三石琴乃のナレーションで始まる最初は、プラントの映像からSEEDの簡易ダイジェスト。ヤキン・ドゥーエ宙域戦の後、ユニウスセブン跡で停戦条約(ユニウス条約)を結んだことの説明となっている。
ザフト、連合が会する条約締結のカットで、金髪の人物とその横にいる人物が不明。本編に関わり有るのだろうか。
L4(ラグランジュ4)プラント、アーモリーワン。CE.73.10.2の字幕が。あれ? L4って連合のコロニーが多い宙域じゃなかったか? でも画面にはプラントが・・・※見直してみると、プラントは1基しかみえない。よく戦いを乗り切ったものだ。
式典装備用のジン。これもホビージャパンで展開されていたMSVとのコラボだ。ザウートの発展型、ガズウートの姿もある。
シグー、ディン、ジンをバックに走るジープに乗っているのはルナマリアとヴィーノ。現場の混乱振りが判るが「こんなの久しぶり、っていうか初めて」というのはつまり式典のことだろうか。
前方にミネルバ、カットを観る限り、左右の翼(?)は折り畳んでいるようだ。
ヘリで降り立ったのはデュランダル。それをレイが遠くから迎える。デュランダルは最高評議会議長、レイはリーダーと呼ばれているものの、ただのパイロット。このシーンから二人の関係について深いものを感じさせる。
デュランダルの声は池田秀一。やはりガンダム作品に登場すると雰囲気が違う。シャアっぽいのが吉と出るか凶と出るかは今後次第だ。
ここでデュランダルが話している内容から、ブルーコスモス達との融和が検討されていると思われる。盟主アズラエルを失ったことで、当時の急進力は失っているということか。もっとも「条約を強化したところでテロは防ぎきれない」というセリフからもデュランダルは否定的だ。
カガリとアスランの登場。カガリは「オーブの姫」と呼ばれている。アスランが服の心配をしているが、カガリのドレス姿は前作で見せたものを想像させて面白かった。
カガリのサポート役としてのアスランの姿が判るが、性格的には成長していない二人が見てとれる。
背景の会話や後のカガリのセリフから、式典とはミネルバの就役式典(進水式)なのが判る。
スティング、ステラ、アウルの3人、それに気付くアスラン。やはり何か通じるものがあるのだろうか。
エレベータでのカガリ、アスランの会話。アスランの口調が変わっている。軍艦の進水式を控えたアーモリーワンで、極秘とはいえ会談を開こうとするザフト側を皮肉るカガリ。
デュランダルとの会見。オーブは主導者を失った後、連合の統治下に入ったと思われるが、どうやって取り戻したのか、その経緯は不明。この二人の会話から会談の内容が判る。
オーブ戦の折り、流出した人間をプラントが受け入れ、その人間達からオーブの技術がプラントへ、ということだが、軍事的驚異になるうる技術をオーブはどれほど持っていたのだろうか。確かアストレイは連合からオーブがデータを盗用したはずだが。ヘリオポリスは確かにオーブのコロニーだが、モルゲンレーテは連合のものだったはず。フリーダムやジャスティスを開発したザフトにどれだけ必要な技術がオーブにあるのだろうか。
スティング達3人のカット。ステラが踊り始めるが、この時点でステラの性格や生い立ちが不明な為、色々と想像させてくれる。ステラの衣装はかなり大胆。胸はかなりあるかな?
横から出てきたシンとぶつかるステラ。シンの手はしっかりとステラの胸に。ありがちな演出だが、二人に面識が出来たことで、今後の戦闘に何らかの影響があるだろう。或いは他のキャラとの人間関係を複雑にするかも知れない。
シンと一緒にいるのはヨウラン・ケントだ。
Bパート
格納庫を歩くデュランダル、カガリ、アスラン。デュランダルのセリフはカガリの物語当初でのポジションを説明しているようにも見える。アスランが驚いているのは、セカンド・ステージMSのザクウォーリア(一般兵士用?)の戦力を目の当たりにしたからか。
戦争放棄を謳いながらもその為に軍事力を持たざるを得ない矛盾を指摘されたカガリは「姫というのを止めてくれ」と反撃。ここでは一方的にデュランダルにやられている感じだ。
ここでは地球連合軍と太平洋連邦を区別しているようだが、俺にはちょっと判らなかったので、一括して「連合」と表記している。
スティング達3人はザフトの内通者達によって、MSのガンダムタイプの格納庫へ。武器を受け取り、ガンダム3機の奪取。格納庫には3体しかないように見える。セイバーは何処だ?
走り込んで銃撃を加える3人。ここの動きは明らかにマトリックスのパロディ。ただ、いきなり突っ込んでいくのは無謀過ぎないか? 幸い、乗り込んだ後で非常ボタンが押されたからガンダム奪取に成功したものの、もっと激しく応戦される可能性は低くはなかったはずだ。
もっともここで表現されているのは、3人の生身での戦闘力の高さ。恐らく前作のオルガ、クロト、シャニの連合3人組の完全版なんだろう。
ザフトのロゴの後、ガンダムの文字が。やはりOSはそのままだ。もっともここでザフトの新型OSなんて積んでいたら、それこそガンダムなんて呼ばれないかも知れないが。
3機は起動時に色が変わっているがPS装甲なのだろうか。インパルスはVPS(恐らくヴァリアブル・フェイズ・シフトの略だと思う)だが、カラミティ他2機はTS(トランス・フェイズ)でパワーが無くなっても装甲の色が変わることはなかった。前のそのままなのは何故?(プラモやトイを余計に売りたいとかいう大人の理由かも知れない。インパルスの色違いなんてモロそれだし)
よく観ないと判りにくいが、MSのコクピットは90度回転して、仰向けに寝かせた状態でも普通に座って乗れるようになっているようだ。でもこの機能、ヤマトの艦長席並みに無駄な機能のような気が。
ガイアガンダムの足はケモノになるだけあってかなり細め。
サイレンがなる基地内。振り向くキャラクターは一瞬だが、今後メインとなる者も多い。
ビーム攻撃で爆発する格納庫の扉。次のカットでジンに当たって爆発するのは判るが、扉だけじゃ爆発せずに溶け落ちるだけのはず。典型的なアニメ演出だ。もっともビームの性質が判らないので、ひょっとすると素粒子ビームで爆発は核爆発なのかも・・・もちろん、そんなわけはないが。
ここでもガンダムと言っているのはカガリだけで、兵士はガイア、カオス、アビスと言っている。
3機で格納庫を次々と蹂躙していく。戦闘シーンはなかなか見応えがある。
倒れる赤いザクウォーリアと白いザクファントム、次のカットでルナマリアとレイが映る。このままこの二機に乗り込むのだろうが、赤と白のザク、現時点では二人の専用機というわけじゃないという見方も出来る。ここではレイのセリフは全くなく、くっ、とかうっとか言っているだけ。
ミネルバのブリッジに応援要請。初めてタリアが喋る。
逃げるアスランとカガリ。目の前に倒れているザクウォーリアの一般用。この時ガイアは他を攻撃しているが・・・。
主人公のシン。コアスプレンダーで発進。メイリンは姿は見せず声だけの出演だ。前作のミリアリアを彷彿とさせる。
ただ、シンがステラとの開闢からここまで何をしていたのかが全く描かれていない為、感情移入が全く出来ない。単なるサブキャラが出撃しているような感じだ。
相変わらず間違った戦艦運用。ZZと同じく、1機のMSの為に専用のカタパルトを持っているみたいだ。しかし、いきなりソードインパルスとは驚いた。てっきり順番から言えばフォースと思っていたが。因みにソードは2号装備らしい。
そのまま逃げれば良かったものの、何故かアスランはカガリと共にザクウォーリアのコクピットへ。ガンダムシリーズで主人公が戦争に巻き込まれて止むなくコクピットの乗り込むのを踏襲しているのだろう。主人公が元々MSパイロット、というのはTV版ガンダムでは珍しい。恐らくその兼ね合いだろう。画面で観る限り、ザクウォーリアの起動はファーストに酷似している。
仮にもオーブ国家元首であるカガリを連れたまま、むやみにMSに乗っていいものか。逃げ易いとでも思ったのだろうが、完全な判断ミスだ。その直後にガイヤに攻撃されているし。演出の都合による(どうしても二人をMSに乗せたかった)ものなのだろうが・・・、2話で何もないと、ミスと言われても仕方がない。
盾からビーム・アックスが出てくるのはいい。
主人公機インパルス登場。敵の目の前で合体していくのは、大昔から言われているように無謀もいいところだ。もっともこれはアニメ演出と割り切るしかない。見栄を切る時、相手は黙って見守らなければならないという暗黙の了解だ。出来れば、それを逆手に取った演出も欲しいところだが。
ガンダムはパーツ毎にレーザー・サーチしながら合体。これはCGあってのものだろう。
ただ、疑問なのは、合体プロセスの中で、シンが妙にコクピットのボタンを押していたこと。こういうのは一番単純なミスの起こり易いところだ。本来なら合体は全自動でパイロットに負担をかけないようにするはず。コーディネーターだから間違えないというのならば無茶だ。人間ならどうしたって集中力が下がったりするはず。それに間違えて横のボタンを押す可能性は、画面を観る限りかなり高そうだ。そんなコクピット、設計段階からミス設計だと言える。もちろんこれは「格好良い合体シーン」の演出である。
SEEDから相変わらず、敵の目の前で見栄を切ったりポーズを取ったり、剣を振りかぶったりする。リアリティよりも殺陣としての演出だろうが、やっぱりメカ(キャラ)重視で見てて辛い部分だ。
シンのセリフ、コクピットのアスランとカガリ、そしてエクスカリバーを繋げて振りかざすインパルスにエンディング曲が重なる。
最後はデュランダルのセリフだが、その前のインパルスを見て笑みを浮かべるデュランダルの真意は? それはインパルスに向けられたものかシンに向けられたものか。カットの繋ぎを観る限り、シンに対してデュランダルは何かあるようだが。
予告
ほとんど出番の無かったレイの姿が。ネオも初登場。ミラージュ・コロイドを使った戦艦は連合のガーティ・ルーという戦艦だ。このミラージュ・コロイドというのはユニウス条約で使用が禁止されたらしい。確かにアルテミスの傘をブリッツ1機で破ったんだから当然か。
個人的にはネオの声に期待。子安武人はどんな声で喋るだろうか。ネオが使うのは、メビウス・ゼロにも似たMAエグザス。やはり関係が気になるところだ。
次回「PHASE-02 戦いを呼ぶもの」
総評
第1話としてはシンの登場場面が少な過ぎるものの、作画レベルは高く、バンクも積極的に使っている感じで悪くはない。ただ、どうにインパクトにかける感じは否めない。こんなに派手なのに何故だろうか。
ひょっとすると、カガリとアスラン、デュランダルを描き過ぎなのが原因なのかも知れない。
とにかく、シンが描かれなさ過ぎだ。唐突に出てきてインパルスに乗り込む。アバン、ステラ、そして出撃と、シンが繋がって見えない。本当に主役なのか疑わしくなってくる。いかんせん描き込み不足だ。俺は最初、デュランダルと共に出てくると思っていたんだが。
登場キャラが多過ぎるのか? とにかく、作画は充分に及第点なのに、本がこれでは先が少し不安だ。
取り敢えず及第点を出しておくが、後半の戦闘シーンの3分の2を第2話に回して、その分シンを描いてくれていたら・・・惜しいな。
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