PHASE-02 戦いを呼ぶもの


脚本 両澤千晶、演出 山口 晋、絵コンテ 山口 晋、福田己津央

ストーリー
 強奪された3機のガンダム。それを奪い返す為にシン・アスカの乗るインパルスが立ちはだかる。
 激しい戦いが繰り広げられ、プラントは破壊されていく。
 一方、強奪したガンダムの回収の為、アーモリー・ワンに近付く戦艦があった。それはネオ・ロアノークが指揮するミラージュ・コロイドを装備したガーティ・ルーだった。
 ザフト艦を強襲し、港を破壊したガーティ・ルー。
 そのガーティ・ルーと接触するため、3機のガンダムはプラントの隔壁を破り宇宙へと脱出する。
 それを追うシンのインパルスとレイのザクファントム。
 デュランダル、カガリ、アスランを乗せた戦艦ミネルバもついに発進する。

アバンタイトル
 ナレーションによる経緯の説明。それから前回後半でのガンダム三機とザクウォーリア(緑色なので恐らくガナーザクウォーリア、ただしオルトロスは持っていない)の戦い、そしてインパルス・ガンダムの登場で始まる。

Aパート
 初っぱなから戦闘シーンの連続。予想していた通り、よく動く。エクスカリバー・レーザー対艦刀を振り回すインパルスの姿は素直にカッコイイ。アニメ的にデフォルメされてパースも強くつけられており、この当たりは流石に餅は餅屋といった感がある。
 メイリン・ホークの本編への顔出しはここが初めてのはず。
 シンは「何だってこんなに簡単に敵に」と、ガンダムシリーズではお馴染みになりつつある「ガンダム強奪」へのツッコミ。
 ここではシンは戦争(戦闘)に対してそれなりの嫌悪感のようなものを表しているが、シンはガンダムに乗ることについて、またガンダムが敵となったことについての感情は何も表していない。ということは、シンは第1話のアバンで語られた「両親、妹の死を招いたのはガンダムである」という意識を持っていないのだろうか。少しでもそれがあるなら、ガンダムと言うものに対してももっと複雑な思いを出してもいいと思うが。
 それとも憎悪の対象はフリーダム(或いはカラミティやレイダー、フォビドン)にのみ向けられるのだろうか。もしそうならば、オープニングでカットが入るシン対キラの戦いが本編に挿入される時、シンがキラと戦う動機となるものは、別に用意されなければならない。
 因みにシンのセリフの中の「あんた達」は、単純にガンダムを強奪したパイロットに向けられているのだろうか。ニュアンス的な感じとして(現在は)ザフトであるシンには相手が地球連合軍であるという思い込みがあるのかも知れない(この時点ではまだ相手の正体は特定されていない)。
 まだまだシンの心情やこれまでの身辺について語られていない為、シンがガンダムに乗って戦場にいる意味、動機が全然見えて来ないので、ここでは単純に「ガンダムのパイロットだから」と理解するしかない。それがシンへの感情移入を妨げているような感がある。つまりガンダム同士の戦闘によって家族を失ったというシンの悲劇性と、インパルスを操って戦闘を繰り広げるシンの姿が重ならないのだ。
 第2話の時点でもまだ(画面に登場しているにも関わらず)主人公が明確にならないのはストーリーテリングとしては非常に疑問の残るところだ。少なくとも小説では絶対にやってはならないことである。
 ミラージュ・コロイドを展開してアーモリー・ワンに接近するガーティ・ルー。ゴッドフリートを装備している。プラントに近付くMSは地球連合軍の主力量産型MS、ダガーL。色は視認性を低めているのか黒っぽい。ステルス機なのかも知れないが、これだけ近付かれても発見出来ていないプラント側も少しマヌケだ。ビームライフルではなくバズーカを装備している。
 ネオ・ロアノークの初めてのセリフ。ここから察すると、声の感じはクルーゼの芝居がかった言い回しプラスムウの気さくさ、が渾然一体となっているような感じた。もちろんこれは意識した作りである。
 カタパルトに進むダガーLは両肩(というかバックパック)にキャノンを装備している。相変わらずこの手のカタパルトは説得力にかける。本来ならばレール・ガンとしての質量加速器(マス・ドライバー)が正しいと思うが。
 宇宙空間での戦闘。ナスカ級を一方的に沈めるネオのガーティ・ルー。
 ここでガーティ・ルーの熱紋を照合しているが、例えば現実でも艦艇の音紋を照合したりして該当する種類(或いはもっと細かなことまで)を割り出すのは行われている。
 ゲイツRとシグーを撃ち落としていくキャノン装備のダガーL。この機体には色がついているので、先に侵入していたダガーLはやはりステルス仕様なのだろう。それらが発進するナスカ級を撃沈。
 爆発に巻き込まれて人が死ぬ、というより、フラッシュの中で先に人だけを消滅させておいて、一瞬の間をおいて爆発させるのはSEEDの戦闘シーンの特徴のひとつだ。人が死んでいるということを明確に表現する狙いがあると思われる。
 SEEDの場合、例え爆発に巻き込まれても死んでいない可能性がある。キラやアンディのように。ただ、小中学生ぐらいの子供に“戦闘では簡単に人が死ぬ”ということを理解させるには仕方のないことかも知れない。ゲームや映画、アニメの影響で、“ちょっとぐらいでは人は死なない”と勘違いしている者は多く居そうなので、それに対しての配慮なのかも知れない。
 港の爆発の振動が戦闘を行っていたガンダムのパイロット達にも伝わる。アスランはヘリオポリスの事を思い出したようだが、前作でヘリオポリス崩壊にアスランがそれほど心を痛めていたのかどうかはちょっと思い出せない。
 演習通りに行かないことに苛立つシン。
 援護のディンを撃ち落とすアビス。MAは水中専用等と紹介されているが、複数のビーム攻撃を同時に行う等、この中では以外と火力が高い。ガイアは変形しながら派手に動き回り、インパルスに対して格闘戦を行っている。強襲型のカオス、格闘型のガイアと明確に機体の役割を描いているのはガンダムシリーズでは珍しいほうだ。機体の特徴はあっても、役割分担という意味では今までガンダムシリーズで詳しく描かれたものは少ない。
 アウルの皮肉を込めた言い回し等、三人のキャラの性格も明確に区別されている。
 パイロットシートの側面にライトと音で接近する物体の警告を促している。一見妙にアナログ(というかローテク)っぽいが、パイロットに強い警戒感を促す意味では結構いいかも知れない。技術レベルに見合ったシステムかどうかは少し疑問だが。
 三機のガンダムの連携攻撃。危機に陥るインパルスを救う、アスランの乗るザクウォーリア。激しくビームを弾いているが、SEEDでのビームの性質が判らないので、何とも言えないところ。
 カガリの負傷で、アスランは戦線を離脱。
 インパルスのエクスカリバーでの攻撃。前作で、突っ立ったままのストライクダガーの目の前で鎌を振り上げていたフォビドンと違い、ようやくまともな剣劇をしているような感じがする。
 レイとルナマリア。レイのセリフは極めて少ないが、クルーゼ的な感じも余りしない感じだ。非常に冷静沈着なのが判る。逆にルナマリアは感情はかなり表に出ている感じだ。
 事態を把握出来ていないデュランダル。シェルター行きを拒み、ミネルバへ。ここでのデュランダルは、巻き込まれて止むを得ずといった雰囲気であるが・・・。
 当たり前のように空を飛ぶガンダムとザクウォーリア。プラントは遠心力で重力を発生させていると思われるので、回転の中心(つまり上空)に行くにつれ、重力は弱まると思われるが、これだけ機動力があるのならフォースシルエットの存在感が弱まって来る。
 フリーダム並みの攻撃を見せるアビス、高い機動力のガイアと機体の見どころは多いが、やっぱりガイア、ケモノになる必要なんてない感じだ。
 レーザーブーメランを振り回すインパルス。見たところ、普通の人間のように遠心力で投擲しているような印象だが、そうだとすると物凄い原始的な武器だ。ガンダムに限らずロボット物で、銃タイプの武器を握らせてさらにその指でトリガーを引かせることにどんな意味があるのか。ガンダムでは掌で持つことで電力を供給したり、武器のスコープとコクピットを直結させたりという理由付けがなされていたが、ここは人型が人型で有る為のデフォルメさせた演出に他ならず、どんな理由を付けてもチープになってしまうのは仕方のないことかもしれない。
 アウルの「じゃあここで死ねよ」という言葉に過剰に反応するステラ。それを窘めるスティング。ステラについて色々と憶測を呼ぶ場面だが、それを承知の二人の詳しい正体についても気になるところだ。
 逃げ出すガイアと共に脱出するカオス、アビス。追うインパルスとザクウォーリア。しかしエンジントラブルでルナマリアは戦線離脱。

Bパート
 混乱する現場に降り立つアスランのザクウォーリア。
 宇宙での戦い。ここでのネオのセリフはやはりムウを彷彿とさせる。
 機動兵装ポッドを使うカオス。カオスの形式番号はZGMF−X24Sで、数字の10の位に2がつくのはセイバーと同じく航空系の機体だ。MA形態はとてもそうは見えないが。
 ぞくぞくとミネルバに集結していくキャラクター。
 エグザス発進。ガンバレルの使い方はファンネルに近い。
 ニュータイプ特有の表現で何かに感応するレイ。この時点ではまだ、レイが何と感応しているのかは明らかにされていない(シーンの流れからそれがネオである可能性が高い)。
 空中戦を繰り広げるガンダム。立ちはだかる敵に対してシンはフォースシルエットをミネルバに要請する。
 タリアは「もう機密もない」とデュランダルに言うが、ここでの機密の意味が判りにくい。何に対しての機密なのか、後にちゃんとした説明があるのだろうか。
 戦闘は続く。音によって敵の接近を知らせる演出は独特の緊張感を醸し出していて面白い。使い方を間違えなければ、これからの戦闘シーンの重要な演出の一つとなるはずだ。こういったワンポンイト的な演出の導入は、スポンサーサイド、特にバンダイの要求する「ガンダムはプラモを売ってナンボ」というものに対してのサンライズ側の回答である、「戦闘シーンの増加」にアクセントを加える為にであることは理解出来る。案外、戦闘シーンの増加による単調さを無くす為の苦肉の策なのかも知れない。
 フォースシルエットとの合体はやっぱり無茶だが、ちゃんとインパルスはバックパックを外した時にディアクティブ・モードになっているのが判る。装備によって機体の色が変化するのは、変化する機体特性に合わせてという設定だが、やはりバンダイの戦略が見え隠れするのが何とも言えないところだ。
 カオスの攻撃によって、ついにプラントの隔壁に穴があく。これを見る限り、巨大な1枚板のようだが、それは幾らなんでも無茶な設定だ。ここは好意的に高熱で溶けて隔壁のつなぎ目が見えないとでも判断するべきなのだろう。因みに溶けた部分が直ぐに冷えて固まったが、宇宙は絶対零度に極めて近いので当然の演出だ。
 脱出する三機のガンダムと追うインパルス、ザクファントム。インパルスのパワーが危険域になるが、機体設定の売りのひとつにはエネルギー切れが発生しない『デュートリオンビーム送電システム』があるはずだが、この時点ではまだ使われていないのかも知れない。
 インパルスまで失うわけにはいかないと、ミネルバ発進を命ずるタリア。それに仕方なく応じるデュランダル。デュランダルの反応は平和主義を願うプラントの議長としては頷けるが、第1話で戦力の保持を雄弁に語っていた姿とは若干の矛盾を感じる。
 ミネルバに降り立ったアスランとカガリ、不審に思ったルナマリアが銃を構える。
 ブリッジではミネルバ発進用意。まだ戦闘体勢には入っていなかったようだ。FCSとはやはり火器管制システムのことか。ここでデュランダル、カガリ、アスランがミネルバのブリッジに登場するオープニングのカットに通じるわけだ。
 ここでアスランは初めて別名である「アレックス・ディノ」を名乗る。
 ガンダムを見失うシン。プラントにへばりつくエグザスの姿が笑える。ステラの恐怖は何を物語るのか。
 エグザス発進とともにレイに再びニュータイプ感応が。しかし、このシーンからもやはりレイ、ネオの両者が感応しあっている様子はなく、一方的にレイが感じているだけのようだ。また、その対象もネオではなく、エグザスという可能性だってある。今後に注目。
 ミネルバの発進。ここではプラントの底へと降りて行っている。一部にCGが使用されているが、他のセル的な色とは若干違和感があり、玩具的に見える。これは惜しいところだ。
 ルナマリアに先導されるカガリとアスラン。カガリはあっさりとアスランを本名で呼ぶ。それに反応するルナマリアはアスランについて何を知っているのか。これはオープニングで匂わせるアスランを取り巻く女性関係の伏線となっているはずだ。
 タリアは前作のマリューと違って有能な艦長らしい。言動にも注目したい。
 インパルスとエグザスの戦い。ザクファントムの背後からはガーティ・ルーが接近する。
 ミネルバ発進にエンディング曲に被さる。このシーン、妙にもたついていて切れが若干悪い。キャラとミネルバのカットの切り替えがうまくいっていないように感じられた。
 ラストのデュランダルの笑みの真意が掴めない。やはりシャア・アズナブルと同じく、池田秀一演じるキャラは複雑な性格をしているようだ。

予告
 エグザスとインパルスとの戦闘。登場キャラクターはシン、タリア、デュランダル、ネオ、アスラン、カガリ、レイと新顔は無かった。ラストで何時も叫んでいた「〜ガンダム!」が今回は「機関最大、発進せよ! ミネルバ!」となっている。ナレーションの中の「出会う若き戦士」が誰と誰のことを言っているのかも気になるところ。ようやくシンとアスランが出会うのか?

 次回「PHASE-03 予兆の砲火」

総評
 とにかく戦闘が多過ぎて疲れてしまう。最初は派手に動いてそれなりに魅せてくれるものの、引っ張り過ぎだ。またしてもシンについて何も語られなかったので、主役としての存在感にかける。MS戦に魅力があるのに比べ、キャラクターがインパクトにかける。
 これはスポンサーサイド(バンダイ)に配慮したものかも知れないが、ちょっと端的過ぎる気がした。
 まるで1話分の内容を戦闘シーンだけを長く引き延ばして数話に分割しているような感じだ。密度はそれほど薄くなってはいないので、失敗しているというほどではないが、これ以上ダラダラと戦闘を続けることは逆効果だ。
 物語にはちゃんとアクセントをつけなければ、戦闘シーンが延々と何話も続くと緊張感が薄れてしまって何とも間の抜けた物語になりかねない。1話、2話と合わせてもやたらとガンダムの戦いだけが続いているような感じもしてしまう。特に地上戦での各MSの戦い方は面白かったにも関わらず、空中戦になると、極普通の戦いにレベルダウンしてしまって、派手な演出の割りには余り残るものが無かった。
 謎の提示もなく、ストーリーの進展も殆ど無い。良くも悪くも戦いだけの話である。



Back