脚本 野村祐一、両澤千晶、演出 鳥羽 聡、絵コンテ 西澤 晋
ストーリー
謎のジン部隊によって、ユニウス・セブンは地球への落下コースに乗ってしまった。
報告を受けたデュランダルは、ミネルバを派遣することを決定する。
同じくその報告を受けたカガリとアスランだが現状ではどうすることも出来ない。差し掛かった休憩室でシン達の話を偶然聞いてしまったカガリ達。彼らの無責任な言動に怒りを露にするが、かつてオーブ攻略戦の際家族を失ったシンはそんなカガリを非難する。言い返せないカガリ。
その頃、地球ではブルーコスモスの新盟主ロード・ジブリールがロゴス達との会合を持っていた。彼らの画策するプランとは?
落下するユニウス・セブンを追って先行するイザークとディアッカ。メテオ・ブレイカーを携え落下阻止に向かうが、そこにジン部隊が襲いかかる。
そしてそれを見ていたガーティ・ルーのネオ・ロアノークはスティング達を出撃させる。
急行するミネルバはシン達のMSを発進させる。その中には、自らザクウォーリアに乗り込んだアスランの姿もあった。
アバンタイトル
謎のジン・ハイマニューバー部隊による作戦行動。ここでいう太陽フレアとは、太陽の黒点から上層に伸びた磁力線が彩層やコロナ物質と相互にからみあって起こる爆発のことで、考えられている機構は2通り。ひとつは磁力線の再結合によるアーケード型フレアというもので全てのコロナ領域で見られる。もう一つは対流により振り回された磁場から電流が生じてコロナにエネルギーが供給されるループ型フレアというものだ(詳しくは本サイトのほうででも何時か解説しておこうかな)。これによってコロナから放出される超高速のプラズマが太陽風(solar wind)で、宇宙空間や地球にも様々な影響(オーロラ、バンアレン帯等)を及ぼす。フレア・モーターと言っていることから、この超高速のプラズマを受けて推進力にしていると思われるが、画面を見た限りではよく分からない。ひょっとすると核パルス推進等が(Nジャマーによって)使えないので巨大質量を移動させる手段としてでっち上げられただけかも知れない。まあ、プラズマで電力を発生させて水(前作でアーク・エンジェルが水を補給していた)を電気分解して出来た水素あたりを噴射剤にしているとかかも知れないが、詳しく突っ込むより雰囲気を楽しむのが良いのだろう。
ここで感心したのがジン・ハイマニューバーが装備している日本刀型剣。別にこれを装備しているのが良いと思ったのではなく、ちゃんと反りが逆になっていることに感心した。日本刀は刃のほうを下ではなく、上に向けて腰にさす。つまり刀や鞘は下向きに反ることになる。よく勘違いして逆向きに描かれたりするが、刃が下向きだと、刀を抜いた後、一度構え直さなければ振り降ろすことが出来ないが、刃を上向きにすると振り上げる刀を腕を円を描くようにしてそのまま振り降ろすことが出来る(実際やってみると分かる)。この程度の知識は刀剣を描くならば当たり前のことだが、SEEDの“殺陣”よりも“伊達(ケレン味)”をとるスタンスから言えばようやく判ってきたかと思う。もっともジンにそんな芸当が出来るのかどうかは疑問だが。
ここで登場するジンのパイロットは『サトー』。ひょっとするとアストレイかMSVのキャラかも知れないが、本編を見ただけではキャラもその言動も意味が判らない。
フレア・モーターによってユニウス・セブンは軌道を変更、地球落下のコースを辿り始める。
Aパート
プラントの司令部(?、最高評議会の機関のようだが)が、地球への落下コースを辿るユニウス・セブンに対して、状況の混乱振りを呈している。
変わってミネルバ、その情報がもたらされるが・・・その報告を受けるタリアは裸(シーツで体を隠している)、横にはラフな格好(ローブ姿)のデュランダルが。結構直接的に二人の関係を表現している。土曜日の6時からやっている番組じゃないな。対象年齢が幅広いガンダムシリーズ(特にSEEDは低年齢のファンは多いだろう)なら、送り手はちょっと考えたほうがいいだろう。富野監督のやり方を踏襲しているというのもあるだろうが、ガンダムの作り手って何故か自分達が放送界のタブーに挑戦しているというか、反骨精神のようなものをアイデンティティにしているような節があって、結構きわどいシーンがあったりする。特に前作は自分達の虚栄心や次代を担っているんだという驕りのようなものが、無意味に内容を過激にしているような感じがあった。ガンダムは幾ら人気があって社会現象になったと言っても、どう足掻いたってサブカルチャーなんだから、そのシーンに本気で思想や信念を持っていないなら描くんじゃない。描いてしまったならちゃんと責任とれよ。前作のフレイのように殺しておいてキャラに「これで楽になった」なんて言わせるんじゃないぞ。
でもこの二人の関係、軍にとってまずいんじゃないだろうか。服務規程とかにそういうのはないのだろうか。一応、自衛隊ではWAC(女性自衛官)との職場恋愛は認められているようだが。これだと前回のタリアのヘタレ振りをみても、「最高評議会議長のデュランダルに取り入って出世した」と誤解されても仕方ないぞ。それに通信もサウンド・オンリーじゃなく、あられもない姿で映像を受けているし(向こうにはタリアの姿は映らないのかも知れないが)。ひょっとするとこの二人の関係、ザフトでは公認なのか? 夫婦別姓?(飛躍し過ぎか)
移動するユニウス・セブン。その報告はアスランとカガリにももたらされる。
デュランダルは「隕石の原因か・・・」とか言っているが、あれの軌道を変えるような隕石が見つかってないわけはないし、あんなデブリだらけのところで(しかも物凄くデカイやつがゴロゴロしている)、摂動がそんなに読めるわけはないだろう。ひょっとするとコーディネーターの技術力ならカオス的な計算もやってのけるのかも知れないが。
デュランダルの報告に動揺するカガリ。ここではカガリの18歳(前作でキラが16歳だったので2年後の今作ならカガリはまだ18のはずだ)的なうろたえ振りだが、逆にデュランダルの株を上げるだけのシーンになっている。もっとも意図しているのかしていないのか、デュランダルの妙な落ち着き振りは真剣な表情に反して何らかの裏を感じさせるのも事実だ。
休憩室(?)でシン達がユニウス・セブンのことを語り合っている。彼らが友人同士ということは全く語られず、それが当然として画面に出ている。彼らの普段の一コマということだろうが、やはり本編でようやく描かれ始めたばかりで、相関関係が判りにくい。富野作品は前知識が不可欠だが別監督でも全部が全部というのは困りものだ。せめてキャラの位置関係が判るくらいまでこういうシーンを増やして欲しい。
廊下を歩くアスランとカガリ。この時点でミネルバは修理の為に相対速度をゼロにしているはずだから、通常重力があるのは少しおかしい。外観状、ミネルバに重力ブロックらしきものは見えないんだが、何で重力を発生させているのだろうか。キャラの動きをみる限り、ちゃんと1Gあるようなんだが。因みに居住区を回転させて遠心重力を発生させる場合、回転周期が早いと(60秒以内)人間は不快になるそうだ。
離れた場所で交わされるでユニウス・セブンをどうするか? という問に、レイとアスランが同時に「砕くしかない」と発言する。何やら共通点があるような二人の描かれ方だが、何を意味するのだろうか。もっとも、この方法は演出的に言えば、全く別の所で同じ内容のセリフを言わせる時、交互に繋がるようなセリフ運びをさせて二度手間を省くという処理だ。だから深読みをする必要な無いのかもしれない。
「最長部は8キロ」と言っているが、これは砂時計(プラントを表現するのには適当と思う)の底のことだろうか。ガンダムのコロニーは直径約6キロ、長さ約32キロの島3号タイプのコロニーなので、質量や落下速度にもよるが、その威力のほうはどうなんだろうか。因みに『柳田理科雄』の世界観ならば、ユニウス・セブンくらいなら大気圏突入時の摩擦熱で綺麗さっぱり溶けてしまうだろう。地球は無傷だ。
シン達が会話しているところにちょうど差しかかるカガリ達。一応、この辺りはお約束的な展開である。
地球滅亡の危機に、ヨウランが「しょうがない、不可抗力だ、そのほうが案外楽かも」という発言をする。当然、カガリはそれに激怒、部屋に怒鳴り込む。カガリの最初の言葉は、まあ正しい。しかし「やっぱりそういう考えなのか、ザフトは!」というのはカガリの幼児性の現れだ。以降のセリフは全くの犠牲者の側にしか立っていないような発言となっている。これではシンにその矛盾を突っ込まれても仕方がないだろう。もちろん、このシーンはそういう展開を意図して作られている。今作でのカガリはまるでスタッフに嫌われているかのように扱いが悪い。まるで幼稚な発言を繰り返している。シンが余り描かれていないことで、勢いアスランの存在感のほうが大きいが、これでは『カガリのような感情剥き出しのお姫様のお守りで苦労が絶えない』という感じが強い。折角、前作からのキャラなんだからもう少しカガリにも感情移入出来るようなセリフを言って貰いたいところだ。
カガリの言葉にシンが突っかかる。ここではシンの子供っぽいところとアスランのやや大人な対応(それでも言動は少しキツイが)を対比させている。
ところでシンが飲んでいたのはタブのついたアルミ缶のようだが、もうちょっと何か用意出来なかったんだろうか。艦内で再利用出来ないなら、ゴミ処理は大変だぞ。
ここでは第1話のアバン、前作のアサギ達の戦死のカットが挿入されるが、この二つの対比はあまり意味がない。シンの言動は少し子供っぽいが圧倒的に説得力は上だ。カガリが幼過ぎるせいもあるが。
もうAパート終了時のアイキャッチは入らないのか?
Bパート
でも、相変わらずBパートにはアイキャッチが入る。しかもキラとラクスだ。
地球の刻一刻と向かいつつ有るユニウス・セブン。
一方地球では老人達が謎の会合を開いてている。ブルーコスモスか? それにしてもここでやっているビリヤード、何なんだろう。同じ色の玉がゴロゴロ、ちゃんとしたルールでやっているのだろうか。
ファントム・ペインという名前が出てくるが、この時点では不明。直後ガーティ・ルーのカットが入るが、何か関係があるのだろうか。その中でステラは熱帯魚を愛でて、スティングとアウルの二人はカードをしている。前作の3人組が他人には我関せずだったのに比べ、互いの雰囲気は良さそうな感じだ。それが前3人との顕著な違いになっている。
ブルーコスモスの新たな盟主、ロード・ジブリール初登場。言動がアズラエル同様、妙に芝居がかっている。地球ではまだ事態を知らない人々の姿が。でもジブリールは「デュランダルは既に地球各国に警告を発している」となっているが、どうやらパニックを避ける為か末端の民間人までは行っていないようである。
白服となったイザークが事実上の今作初登場。顔の傷はやっぱり無くなっている。
何かをしているデュランダル。余裕の笑みを見ると状況に対する深刻さは感じられない。やはりこの男、何かあるように感じられる。デュランダル・ラスボス説を唱える俺としては、第5話中では一番気になるカットだ。
ユニウス・セブン落下を発端に再びコーディネーターとの戦争を目論むロード・ジブリール。雄弁にそれを語っている。ジブリールが「例のプラン」と言っているのが気にかかる。他のメンバーはユニウス・セブンが落ちた時に民衆がどれだけ残っているかを心配しているようだが、ジブリールは、事前に何か計画を立てていたことといい、ひょっとするとユニウス・セブンは落ちないと踏んでいるような節も見える。それが確信なのかどうかはまだ判らないが。
最後のビリヤードの球を投げつけるロード・ジブリール、彼の胸のうちにあるものは何だろうか。
発進するミネルバ。先行するボルテールとルソーにはメテオ・ブレイカーが。文字通り訳すと隕石破壊、ということになる。何でそんなものもってるんだ? という感じだが、恐らくプラント建造の為に小惑星をそれで破壊して鉱石を取り出すのだろうと思われる。
イザークとディアッカ。ザフトには階級がないが、制服の色で暗に区別されているのは何処も変わらない。
ルナマリア、無重力の中をそんなミニスカートで飛んでいると本当なら丸見えだぞ(どうせこの手の作品ならアンダースコートなんて履いてないだろうし)。
自室の中のカガリとアスラン、飲み物は今度は缶じゃないな。
マユのケータイの画像を見るシン。良く見ると、マユが映っている構図が変だ。別の人間にケータイを使わせて撮ってもらったのか、単純にシンが入れているだけなのか。それともケータイがこの世界では廃れてきているかだ。
ここでカガリが悩んでいるのが自己弁護というのが彼女の幼児性を表現している。もう少し大人にならないと嫌われてしまうぞ(もう遅いような気がするが)。それに比べてアスランはあくまでも大人だ。
ユニウス・セブン、それを見るイザークとディアッカ。コンビも前のまま、二人の関係はファンには堪らないだろう。
眠るカガリを置いて一人部屋を出るアスラン。通路の構造を見る限り、やはり居住区画を回転させて重力を発生させているようにも見えるが、ミネルバ程度の大きさなら、回転半径と回転周期はかなり小さいはずで、どうしても1Gというわけにはいかないだろう。月の重力である1/6Gにも満たないはずだ。
ルナマリアとすれ違い、カガリの立場を説明するアスラン。カガリの側に立つアスランとしては、彼女の立場も理解してもらいたいところだろう。
大型ディスプレイでデータを見るレイ、無言のシン。この二人の会話から単なるパイロット仲間の意識よりもっと深いものを感じることが出来る。
ブリッジに入るアスラン。ミネルバは移動しているはずなのに、今度はブリッジで重力がない。一体、どうなってるんだろう。
モビルスーツを貸せというアスランに対しタリアは拒否するが、デュランダルは議長権限の特例として許可する。本当にデュランダルの意図するところは読めて来ない。複雑な男である。
メテオ・ブレイカーを仕掛けるディアッカの部隊にジン・ハイマニューバーが襲いかかる。ガナーザクウォーリア以外は全部ゲイツのようだ。
それを見て、ガーティ・ルーのネオはスティング達の発進を命じる。
ミネルバ、シン達の発進準備。アスランに与えられたのはザクウォーリアだ。流石にセイバーの登場はまだのようだ。タリアが『(イザーク)ジュール隊長』と言っているのが面白い。前作でお荷物だった(でも人気はあった)イザークに対するファンサービスか。
ジュール隊がアンノウンと交戦中の為、装備が戦闘用に変更、さらにボギー1(ガーティ・ルー)も接近、戦場は混迷を呈して来る。
それぞれの装備を行い、出撃準備に。ルナマリアとアスランの言動から、アスランのMSに乗ることへの躊躇いは前大戦での精神的な傷によるものの感じだ。しかしアスランの「馬鹿にするな」は意味が判りにくい。
シンのインパルス発進。でも、やっぱりこういう時って合体した状態でマス・ドライバーで打ち出すのが正解じゃないか。この場合、カタパルトは推進剤の節約と短時間で大きな加速度を与える為のもののはずだから、向こうでインパルスを合体させて無駄に電力や噴射剤を使うのは非効率だと思うんだが。それともまさかミネルバはインパルスをバラバラの状態じゃないと射出出来なかったりして。
ガーティ・ルーからもカオス、ガイア、アビスが出撃。
ミネルバからレイ、ルナマリア、そしてアスランが発進。アスランは自分を「アスラン・ザラ」と言っているが、それが後々どんな意味を持つだろうか。
予告
次回はジン・ハイマニューバーの部隊とシン達との戦闘がメインとなるようだ。互いの傷の深さが更なる悲劇を呼ぶのだろうか、というナレーションは何を意味しているのだろうか。
映像を見た限りでは、既に大気との摩擦で赤くなっているMSの姿が見える。敵側ではサトーがかなり目立っているようだが、ユニウス・セブン落下の真相は語られるのだろうか。ちなみに今回の最後の〆は「ガイア」。
ラストでちらりとキラとラクスの姿もあるが・・・。
次回「PHASE-06 世界の終わる時」
総評
強奪されたガンダム追跡のストーリーを終え、新たな局面に入った物語。
癒えぬ傷跡とは、冒頭のユニウス・セブン、そしてシン、カガリ、最後ではアスランまでもを含んだサブタイトルであることが判る。
ようやくキャラ達の日常も挿入されるようになった。カガリの幼稚さは感情移入を妨げられて前作からのファンには余り好ましい状況ではないだろう。デュランダルはますます複雑さを出してきている。
物語上では次回以降に展開される戦闘等に対する緩に相当する部分だ。謎や伏線の提示は多いが、総じて動きよりもキャラそれぞれの感情の表現がメインとなっている。それ故にカガリの扱いが時間を取っている割りには単純過ぎるのが惜しい。もっとも今までのSEED DESTINYに比べれば情報量は更に多くなっている。デュランダルとタリアの関係、ついに登場したロード・ジブリール、イザーク、ディアッカ再登場、サトーを始めとする謎の部隊等、次への期待をいやが上にも高めているが、余り緊迫感が漂っていないのは、妙に冷静にしているデュランダルの為だろうか。起承転結の起承に相当する部分が今回の話だ。
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