PHASE-06 世界の終わる時


脚本 野村祐一、両澤千晶、演出 吉村 章、絵コンテ 下田正美

ストーリー
 ユニウス・セブンは刻一刻と地球に落下していた。
 しかし、それの破砕活動に向かったジュール隊のディアッカ達を謎のジン部隊が襲う。その戦闘にカオス、ガイア、アビスが加わり、更にミネルバを発進したシン達も加わり、戦況は混迷を極める。
 タリアはカオス、ガイア、アビスを強奪したのが、ただの海賊か、それとも地球軍と判断するかで状況の対応が判っていることに苦慮する。
 デュランダルは状況を優先し、ガーティ・ルーにメッセージを送る。
 一方、戦闘の最中でも破砕作戦は続く。アスランはイザーク、ディアッカと共にスティング達を撃退する。
 帰還していくスティング達。しかしそれはユニウス・セブンの限界高度に達したことを意味していた。
 ミネルバはそのまま大気圏に突入し、ギリギリまで破壊活動を続けることを決める。デュランダルは退避するが、カガリはそのままミネルバに残る。
 アスランとシンは最後まで残ってメテオ・ブレイカーの起動を行っていたが、そこに迫るサトーの乗るジン。パトリック・ザラの思想こそ本当だというサトーの言葉に動揺するアスラン。
 サトーを撃退するが、シンとアスランは引力に引かれ落ちていく。
 地球では避難を進めるラクスと、空を焦がして落ちていくユニウス・セブンを見上げるキラの姿があった。

アバンタイトル
 前回のハイライト。ミネルバの中でデュランダルからユニウス・セブンの地球落下を知らせられるカガリ。
 ジュール隊のメテオ・ブレイカーによる作戦。その支援をするミネルバ。
 その頃MSを率いるディアッカをジン・ハイマニューバー部隊が襲撃する。
 ここらは新カット。
 ジン用ライフルを射出し、自らも出撃するイザーク。シンはインパルスを合体させ、仲間達と戦場に向かう。
 ミネルバでは、敵がジン(ハイマニューバー2型)を使っていることに動揺する。そこにはカオス、ガイア、アビスの姿も。
 そしてブリッジに来たカガリはアスランが出撃したことを聞かされる。
 ちょっと小走りだが、状況説明をさらりと済ませている。

Aパート
 ジュール隊ジンとジン・ハイマニューバー部隊の戦闘。射出されたライフルを受け取る姿はスピードこそ違うものの、ファーストでホワイトベースから射出されたビームライフルを受け取るガンダムに似ている。
 第5話の説明で、ジンの日本刀型剣の装備を誉めたが、前言撤回。この抜き方は結局何も理解していなかったんだろう。それとももともとジンには無理だったということか。
 因みに西洋と東洋の剣には明確な違いがある。それは東洋の剣が刃の鋭さを利用して斬る為の武器に対し、西洋の剣というのは基本的に重さを利用してぶん殴る武器だ。これは鎧や盾の発達等の歴史も関係してくるが、MSに斬る為の実剣がどれほど役に立つかは疑問だ。エヴァのような特別な仕様なのかもしれないが。
 イザークのザクファントムはブルー、しかも両肩に六連装ガトリングガンを装備している。
 そこにカオス、ガイア、アビスが登場。彼らの口振りからユニウス・セブン落下に怒りを露にしているのが判る。カオスはちゃんと変形シーンを見せている。
 カオス達3機のガンダムが双方のジンを破壊していく。
 そこに到着するシン達。戦闘に突っ走るシン、アスランは戦闘が目的ではないというがルナマリアが反論。結構ルナマリアは好戦的に描かれている。状況から言えば正確な判断と言えるが。
 ミネルバのブリッジ。カオス達の攻撃を受けている知らせが入る。ここからのタリアとデュランダルの会話は少し難しい感じだ。
 ようするにカオス、ガイア、アビスを強奪したのが海賊(?)ならボギー1を叩く方法もあるが、地球軍ならばジュール隊やミネルバの作戦行動を知らせて引かせることが出来るが、それは同時に敵が地球軍であると明確にすることであり、つまりプラントに対して地球軍が略奪行為を行ったことを公言することになる。だからこそタリアは現状が後のプラントと地球軍との火種になることを恐れている。詳しい説明がなくさらりと流しているので年少の視聴者には理解しにくいシーンだ。
 現状でのミネルバの最優先事項はユニウス・セブン落下阻止にあるからボギー1と戦闘行為に及んで時間と戦力をロスさせたくないのは当然だが、だからと言って相手を地球軍だとみなしてミネルバの状況を説明しそれでボギー1が引いてしまうとが違った問題が出るというわけだ。
 だからこそタリアの「ここでの戦闘に何の意味もない」というセリフが意味を持って来る。
 更に相手が地球軍だった場合。ここで戦闘を行うことは先のユニウス・セブンを動かしたジン部隊とミネルバが関係があるのではないかと疑われることになる。つまりプラント側がユニウス・セブンを動かしたという誤解を招くわけだ。
 ここでのタリアはかなり明晰な判断をしている。彼らの会話中にも戦闘は続いているが、表情とセリフが合わないカットもあるが、総じて流石に作画レベルは高くしかも良く動いている。バンクは少なくほとんどが新作カットのようだ。
 ボギー1へのコンタクトを命ずるデュランダル。流石に戦闘よりもユニウス・セブン落下阻止を優先させたか。
 アスランのブレイズザクウォーリアが大活躍。流石にヤキン・ドゥーエ攻略戦を生き抜いた英雄である。カオスの機動兵装ポッドを2機破壊している。
 ルナマリアとステラ。カオスがケモノ型になって地表を走っている。ユニウス・セブンはこれだけの質量があると恐らく僅かでも引力があると思われる。だが、やっぱり走るのは無理だろ。かなり速度が出ているようなので、ただ走るだけなら直ぐに引力を上回って浮かび上がるはずだ。やっぱり足の裏に何か付いているのかも知れない。
 オルトロスを撃つルナマリア。ちょっと無意味にポーズを付け過ぎだ。
 それにしてもザクは強い。今回の設定ではザクは一応量産機だがまだエースパイロットにしか配備されていない最新モデルで、性能は少なくともストライク程度はあるので、これほどの力が発揮出来るのだろう。これを本格的に量産配備したらプラントの総合的な戦力は飛躍的に上がるはずだ。
 アスランに続いて全く同じポーズでルナマリアのザクもビームホークを投げつけていた。ぶっちゃけて言えば色変えのバンクなのだが、ザクの専用投斧プログラムでもあるのだろうかと思ってしまう。
 地球に迫るユニウス・セブン。その上では戦闘の光が輝いている。一方地球では世界各地の人々の様子が。徐々にユニウス・セブン落下に気づき始める。
 このシーンはアルマゲドンのパロディであることは間違いないが、流石に同じ過ちは犯してはいない。アルマゲドンは世界に時差がないという大ポカをやらかしていた。
 そして遂にアメリカがそれを公に発表。
 そしてオーブ(?)でも同じように放送が。それを聞く者の中にはラクスとキラの姿も。でも毎回Bパート前のアイキャッチで二人が描かれているし、Bパートでも二人のちゃんとした出番があるのでここで顔を隠している意味が全然ない。後半のフリだとすればやや早急な感じだ。
 各地で開かれている記者会見をモニター室で見るロード・ジブリール。派手な衣装と黒猫を可愛がるケレンに満ちた姿がその性格をかいま見せる。
 それにしてもここでの記者達の会話内容は今度はディープ・インパクトのパロディだ。実際には超巨大質量の落下に対して例え大深度シェルターでも余り意味はないだろうが。

Bパート
 戦闘の最中、ユニウス・セブンの破砕作戦は続く。
 メテオ・ブレイカーはやはり小惑星に穴を開けて中で大規模な爆発を起こして破壊するシロモノのようだ。ちゃんと三点支持の土台からドリルが打ち込まれている。これはアルマゲドン、ディープ・インパクトでも行われたのと同様の内容である。もっとも核が封殺されている中、それに変わる破壊力をもったものが何か気になるところだが。
 ガーティ・ルーにメッセージを送るミネルバ。それを眺めるネオ。
 その頃、ユニウス・セブンでは、サトーが破砕作戦の阻止を焦る。ガンダムやザク達が戦う中、破砕作戦は進み、ついにユニウス・セブンは大きく分裂する。
 ここでユニウス・セブンの中心で光が起こっているが、これが爆発の光でなければ(核は使えないので)、恐らく地面の崩壊による放電現象だと思われる。もっとも一点から強烈な光で出ているので、やはり何らかの爆発だと見るほうが自然か。
 ディアッカの「グゥレイト!!」は何の影響だ? 性格が変わったのか?
 呆然と見つめるサトー、逆にアビスのアウルは訝しがっている。
 しかしユニウス・セブンは大きく割れただけ。さらに細かく砕くよう、アスランが指示を出す。それにイザークとディアッカが驚いている。この三人、もとザラ隊だけに息はぴったりだ。
 迫るカオス、アビスにアスラン達3人が応戦。ザクの能力と3人のパイロットの力も合わさってカオス、アビスに大きなダメージを与える。シンも驚くばかり。しかしアスランのザク、また同じようにビームホークを投げているな。
 ガーティ・ルーからの帰還信号。音が凄いマヌケな感じだが、宇宙では音は聞こえないんだからまあ、いいのかも知れない。プラネテスなんてそのあたり凄くリアルに描きながら、それでもちゃんと迫力のある画を作っているんだが。
 それを見て安堵の表情を浮かべるステラ。確か設定では戦闘には尋常ではない力を発揮するとあるが、性格が変わるとまでは書いていなかったな。これから明確に性格変貌が描かれるようになれば、やはり作り手にとってそのほうが描き易いキャラということになる。
 ミネルバのブリッジ。敵の帰還信号に対して、タリアが別の見解を示す。今日のタリアは冴えまくりだが、ここでは暗にネオの策士ぶりも伺える。つまり、ギリギリまで戦闘をしておいて、ユニウス・セブンが限界高度に達したために退却したのか、どちらか判らないようにしているのだ。
 因みにこういった状況を特別な言葉で表現する作品も多い。例えばガンダム0083では『阻止限界点』、アルマゲドンなら『ゼロ・バリアー』というふうに。限界ギリギリ、それが命運を分けるような場面ではそれに見合う名称を用いるのが印象も深く効果的ということがある。
 デュランダル達に移動を願うタリア。ミネルバで大気圏突入しユニウス・セブンの破砕を続ける旨を告げる。これは俺の予想通りの展開だった(別ページ参照)。
 「運の強い女」という言葉に承諾するデュランダル。覚悟を決めたようなタリアとやや悲痛な表情のデュランダルの微妙な位置関係が面白い。少なくとも肉体関係にあるデュランダルがタリアへの心配を抑えて任せる為にはそのような言葉にすがるしか無かったんだろうと思う。子供な考えではデュランダルは無茶苦茶にしか見えないかもしれないが、少なくとも恋愛(人間関係)を描いてきた両澤千晶だからこそ描けるような場面であると思う。まあ、軍規がどうこう言えば、やはり変な場面ではあるんだが。
 カガリがミネルバに残ると言い出す。デュランダルはそれを許可してしまうが、それに対するタリアの態度は諦めというよりもデュランダルの真意に対してのもののような感じだ。少なくともカガリは一国の執政官であるのだから、危険なところに置いておくようなことは外交問題回避の為にもあり得ない。それでもデュランダルがカガリを容認した理由は?
 もっとも演出的にみれば、これはミネルバをオーブへと導く為の伏線だというのが判る。カガリがいることでミネルバを直ぐにオーブに入港させることが出来る。つまり、前作のキャラクターを登場させたりしてストーリーを展開していくのに有利な状況が生まれるからだ。
 さらに言えば、プラントと地球は当然、まだ完全に関係が修復されたわけではない。そこにミネルバが地球降下等を行ったら、ミネルバは孤立してしまうだろう。後々オーブを味方につける為にも、各国からの不信感を回避する為にも、ここは敢えてカガリをミネルバに残したとも考えられる。そういうことならばデュランダルもやはりかなりの策士だと言える。
 地球の引力がより顕著になりはじめたユニウス・セブン。大気との摩擦が発生している。ミネルバは緊急のことでマニュアル参照を呼びかけている。この部分、けっこうリアルな感じだ。もっともミネルバの配備地が何処か詳しくは判らないが、本当に大気圏突入能力等必要だったのか。それとも今は全ての艦艇が持っている能力なのか。だとすればプラントから充分な説明がなされない限り、地球側は再度プラントの地球進攻があるのではという危惧を拭い去ることは出来ないと思うんだが。
 最後まで残るアスラン、そしてシン。シンの「あなたみたいな人がなんでオーブなんかに」という言葉は、単に「オーブの人間だから嫌っている」という意味だ。オーブだから悪い、オーブだから憎い、という単純な怒りなら、シンの持つ怒りは逆に根が深いと言えるだろう。
 アスラン達の作業をジンが妨害に入る。ここでジンのパイロット(サトー)の口から語られる動機は、そのまま前作のコーディネーターの論理そのままだが、面白いのがクライン派の後継者、という点。これはつまり、デュランダルのことを指しているはずだ。ここでは明確にザフトもまだまだ一枚岩ではないことを伺わせる。ただ、前作であれだけ叩かれたクライン派が戦後直ぐに復権出来たとも思えない。恐らくプラント内では相当な混乱があったのではないかと推察される。
 それにしてもザクは幾つビームホークを持っているんだろうか。それとも投げたものを回収しているのか?
 サトーの言葉に動揺し、虚を衝かれるアスラン。シンもジンの自爆によってダメージを受ける。そのジンの破片がメテオ・ブレイカーに当たり起動する。
 ミネルバの大気圏突入シークェンス。サトーを倒し、シンとアスランは脱出しようとするが間に合わず大気圏に突入する。前作でもフリーダムが大気圏に突入していたが、インパルスのVPS装甲はともかくザクの装甲は何だ? これじゃあ、燃え尽きてしまうぞ? それともTS装甲なのか?(でも前作のカラミティ達も大気圏に突入出来るような感じはしなかったな)
 結局、サトー達がどの勢力なのかは語られなかったが、単純に現プラントの不満分子ともとれる。ガンダム・シリーズは戦争を○○VS○○という単純な二極化をしないのが特徴だが、その為一体誰が本当の敵だったのか判らなくなる時がある。大抵は最終回で倒された者が一番の悪者になってしまうんだが。
 場面転換。子供達を誘導するラクス。その先ににはキラ。
 キラの様子を見る限り、どうにもZZのカミーユ状態に見える。空を焦がすユニウス・セブンは凄い光景だが、かなりのオーバースケールだ。あれなら本当に地球を滅ぼしてしまうぞ。

予告
 地球へと落下するユニウス・セブン。描かれ方がやはりアルマゲドンやディープ・インパクトが元ネタになっているのがよく判る。どうやら次回でキラが動くようだが、どうなるのだろうか。
 予告を見る限りでは次回の情報量が如何にも少ない。ただ大きな被害とプラントとの戦争の兆しが見えてきたのは間違いない。

 次回「PHASE-07 混迷の大地」

総評
 複雑な状況と戦闘が描かれ、かなり濃度の高い回だったと思う。場面場面で主役となるキャラが異なり、それぞれのキャラが満遍なく描かれているが、逆に作戦を指揮している筈のイザークやディアッカが後半には役目は終わったとばかりに消えてしまうなど、キャラが多過ぎる故の問題も一方で起こっている。そしてもっとも問題なのがやはりシンだろう。この際、やはりかなり印象が薄い。
 最近思うんだが、前半の主人公をアスラン、それから引き継ぐ形でシンに持って来ようとしているのではないか、というふうにも取れなくもない。だから前半をアスランをメインに描いておいて、主役メカ交代劇と同じように主役そのものも変えてしまうのを目論でいるのではないか、と邪推してしまう。それだけシンがおざなりだ。
 一方タリアやデュランダル、ネオの説明でははっきりと見せない策士振りも見せて、各キャラの持ち味発揮はかなり描かれていると思う。戦闘シーンも密度が濃く、見応えは充分だった。
 演出、絵コンテに新しい名前が出てきたが、恐らく各自の持ち味がよく出ているんだと思う。両澤千晶の「溜め息から入るキャラクター」が無い分、キャラの艶かしさは消えているが、それが逆にすっきりしている。
 全体的に緊張感もそれなりにクオリティの高い回だと思う。




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