小島監督作品の面白さとは?



 今や世界的に有名になってしまったスーパークリエイター、小島秀夫監督。ゲームに限らず評価は千差万別だが、彼が高い評価を受けていることは誰もが納得するところだろう。
 その作品の面白さ、凄さというのは何処にあるのだろうか。
 まず、第一に徹底したディティールの表現にあると思う。メタル・ギアソリッド3が発表になった時、「劇中で使用されている銃器を見ただけで設定されている年代が判る」と言われたぐらい、細部に渡り統一され、リアリティが追求されている。
 もちろん、そういうものは今までに幾らでもあった。ゲームに限ったことではないが、クリエイターとしては自分の得意な分野、知識のあるものに関しては出来るだけリアリティを追求しようとするものだ。
 しかし、小島監督はそれだけにとどまらず、そのリアリティを単なるリアリティとしてゲームに持ち込むのではなく、見事なまでに“ゲーム性”として昇華させたことにある。リアルさがそのままゲームとなっているのだ。
 その最たる例がメタル・ギアシリーズだろう。
 当時のゲームは表現能力や容量等の問題によって、様々な制限があった。だからスパイもの、戦争ものに限らず、特にコンシューマ機では爽快感やその他を追求する為に、設定を設定だけにしておいた作品も多い。
 その中で、コンシューマという媒体を逆手にとって、それでしか出来ないような作品、それがメタル・ギアであった。
 当初はMSX2という決して有名ではないパソコン(ゲームパソコンと言っても良いだろう)での発売だったが、熱狂的なファンを獲得、それが今日のメタル・ギアシリーズへと繋がっている。
 ゲーム性とリアリティをともなった演出、設定、それを端的に表現しているのが隠密行動、つまり『隠れる』というゲーム性だ。
 メタル・ギアでは、潜入が主任務であるが、主人公であるスネークは堂々と真正面から突破していくわけではない。時には壁越しに、時には戦車やジープの影に隠れながら、敵に見つからないように奥深くへと潜入していく。
 敵に見つかるとわらわらと沸いて出て、戦闘が非常にきつい。もちろん腕次第で敵を殲滅することも出来るが、銃を使っただけでも敵を呼び込んでしまうゲーム、出てくる敵と片っ端から戦っていたのではクリア等おぼつかない。
 だからプレイヤーは勢い、どうやれば敵に見つからないか、何処が敵の死角となっているのか、頭を働かせながら進めていくことになる。
 もちろん、当初のゲーム機の性能上、それはチープなものであったが、そこから生まれる緊張感や焦燥感、どうにも出来ないもどかしさは相当なもので、それがメタル・ギアを名作へと押し上げている。
 このリアリティはどの作品にも共通で潜んでおり、爽快感や動きを主軸に捉えたZ.O.E(これは監督ではなくプロデュース作品だ)でも同じことが言える。
 世界観に共通のものを使っているのもファンをにやりとさせる演出だ。例えばスナッチャーとポリスノーツは同じ時間軸の上に存在する(設定は微妙に違うが)し、メタル・ギアとも様々なところで共通なところがある(スナッチャーでギブスンの相棒を努めるロボットが初代メタル・ギアだ)。
 こういうシリーズを通してプレイしているファンを喜ばせる演出は流石に的を得たもので、他の“シリーズもののお約束”にとどまらない、クロスオーバーな作品で垣間見える。
 小島監督は評価は高いが一部ではどうだか知らないが、決して神のように崇められているわけではない。
 作品をプレイすれば判るが、そこはかと漂う“俗っぽさ”が小島監督作品を「何だか手の届かないところに行ってしまった」と思わせない微妙なところで押し止めている。
 この俗っぽさとは実は非常に重要なことで、大作としてシリーズが進むにつれ、より大衆性を高めるが故に俗っぽさをどんどん切り捨てていく作品も多い。ドラクエやFFが有名になるに連れて、何処となく漂っていた“うさんくささ”がすっかり消えてしまった。
 そんな中でもスナッチャーでもポリスノーツでも、まるで開き直るかのよに元ネタを大いに明かしながら、それでも作品の質を高くしているのは流石としか言いようが無い。
 メタル・ギアシリーズは多少、とっつきにくくなってしまった感もあるが、それはゲーム性の問題から当初から言われていたことなので、問題はあるまい。
 ようやく時代が追いついてきたクリエイター、と言えなくはないが、当初からその評価は高かった。穿った見方をすれば、時代が追いついていないということは、現状にあった内容やゲーム作りが出来ていないということ、それに引き換え、小島監督は最初から自分の持ち味をどんどん表に出しながら、新しいハードを得る度にその認知度を増していった、進化し続けている希有なクリエイター、と言えるだろう。

※この文は多分にKai個人の印象、そして当時の曖昧な記憶そのままに書かれています。よってミス等も多々あると思いますが、あくまでKai個人としての感想です。



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